機械工学とはどんな学問なのか

ノート

「機械工学」について、実際どんな学問なのかを説明しようとすると意外と難しいです。
歯車やエンジン、ロボットの設計なんかを想像する人も多いと思いますが、それは機械工学の見えている部分にすぎません。
この記事では、現役エンジニアの視点から「機械工学とは何か?」を説明してみます。
これから勉強する人や、ものづくりの世界に興味がある人の参考になればうれしいです。

モノを動かす仕組みを理論と現場でつなぐ学問

機械工学とは、一言でいうと「動くものを理論的に設計し、つくるための学問」です。
身近なところで言えば、車や飛行機、冷蔵庫、エアコン、自動販売機など、何かしら動きのある製品には必ず機械工学が関わっています。
大学の講義では、以下のようなジャンルを学びます。

  • 力とモーメントの関係(材料力学、機械力学)
  • 熱やエネルギーの流れ(熱力学、流体力学)
  • 設計図の読み書き(機械製図、CAD)
  • 制御や自動化(制御工学、ロボティクス)

いろんな科目がありますが、共通しているのは「モノの動きや構造を数式と理論で扱う」という点。
ただし、理論だけでは終わらないのが機械工学の面白さ。
実際には「設計した通りに動かない」「思ったよりも熱がこもる」「ビビり振動が出る」など、理論通りにいかない場面が山ほどあります。
だからこそ、理論と実物をどうつなぐかが機械エンジニアの腕の見せどころになります。

設計・製造・評価まで「つくる工程すべて」に関わる

機械工学の大きな特徴のひとつが、「つくる工程のすべてに関わる」という点です。
たとえば自動車部品を例にすると、

  • CADで設計をつくる(3Dモデリング)
  • シミュレーション(強度や熱の解析)で性能を予測
  • 試作品を加工し、検証やテストを実施
  • 生産ラインで製造されるよう設計を調整
  • 問題が出たら再設計し、改善策を盛り込む

というように「つくる→試す→直す」をぐるぐる回すのが基本です。
機械工学は、理論だけを学ぶ学問じゃありません。
設計者やエンジニアとして「現実と向き合う力」を育てることが大きな目的です。

目に見えない力を見える形に変えるのが機械工学

最後に少しだけ抽象的な話をすると、機械工学って「目に見えない力を、目に見える形に変える学問」だと感じています。

  • 力や熱、流体の流れを数式でモデル化する
  • 見えない負荷や応力をCADやCAEで“見える化”する
  • アイデアや構想を、実際のカタチや部品に落とし込む

つまり、「見えないものを見えるようにする」「動かないものを動かす」のが機械工学の本質だと思うんです。
だからこの学問は、ロマンもあるし、奥深いし、終わりがない。
学べば学ぶほど「なぜ?」が増えていく分野だと、いまでも実感しています。

というわけで「機械工学ってなんだろう?」という問いに対して、少しでもイメージが膨らむきっかけになればうれしいです。

この分野に興味を持った人は、ぜひ動くものを分解したり、設計してみたりして、自分の手で体感してみてください。
それこそが、機械工学を学ぶいちばんの近道です。